<ひまわりの会 設立のいきさつ>
ガジマルの会に参加させていただくのは今回が初めてです。今回は前泊して娘と一緒に沖縄を満喫して今日の講演会にのぞみました。今日は「ひまわりの会」のことを中心にお話させていただきます。
私の場合、12年前の次女が3歳の時にターナー症候群の診断を受けました。初めて聴く診断名に誤診であって欲しいと泣き明かしました。だれに相談したらいいのかわからず、ターナーの娘さんをもつお母さんと話がしたいと思いました。ある日、日比逸朗先生(当時:国立小児病院)の名前が掲載されたターナー症候群に関する新聞記事を読む機会があって、海外では本人・家族の団体があってお互いの悩みや相談を話し合っていることを知りました。また、日本国内に家族の会がまだ無いことも知りました。会の活動について、日比先生に相談してみたところ、海外の家族会を紹介してくださり、デンマークの会の会長、ベンテ・コンラドセンさんに連絡してみることにしました。ベンテさんとは手紙で相談しました。アメリカに住んでいた親戚に英語の手紙の代筆をお願いして送りました。ベンテさんからのアドバイスは、先ずは主治医に相談して希望を話してみたら、とのことでした。すぐに主治医である藤田敬之助先生に相談しました。藤田先生もいわゆる患者団体の必要性を感じていて、日本国内にも設立したいと考えてベンテさんにも相談していたところだったということでした。このときはまだ「ひまわりの会」の名称はありませんでしたが、この12年前の相談が「ひまわりの会」活動のきっかけになりました。
現在では会員の中に、結婚されたターナー成人女性や、子供を育てている成人本人もおられます。
<ひまわりの会 活動について>
年に数回、集会や勉強会を開催しています。子どもたちにはいっしょに遊んでもらって、お母さんやお父さんは、お茶を飲みながら、時にはビールを飲みながら相談しあって交流をしています。看護師さんや学生さんにボランティアでお手伝いいただいています。なるべく費用の安い施設を使って、時には宿泊つきのイベントも実施しています。会報も年に2~3回発行しています。
学校の先生向けにターナー症候群を説明した資料を藤田敬之助先生といっしょに作成しました。当時、ターナー症候群について、学校の先生にどう説明いいか判らないとの会員さんから相談を受けることが多かったからです。いまでも多くの会員さんからよく要望を頂く資料になっています。
他の会との交流もしています。東京の「わかばの会」と合同でディズニーランドツアーを共同で企画しているところです。「ひまわりの会」「わかばの会」の方以外にも声をかけようと思います。
<ターナー女性と家族の会連合会について>
現在全国には20箇所の地域で会が活動していると聞いています。2003年にターナー女性と家族の会連合会の活動も始まりました。全国各地の会がもつ情報を持ち寄って、交流を深めようというのが目的です。2004年は10月16日に名古屋で開催予定です。
<署名活動>
厚生省にも働きかけをしてきました。
最初の署名活動では、ターナー症候群で医学的に低身長であるなら成長ホルモン負荷試験なしでも成長ホルモン治療が出来るようにするための臨床治験が開始してもらえるようになりました。
二回目の署名では、成長ホルモンの保険適応の拡大を目的に、当時の厚生大臣に直接面談しました。16,000人分の署名と嘆願書を直接大臣にお渡しすることができました。この嘆願署名にはガジマルの会の皆さんにも参加いただいたと思います。この面談の席で厚生大臣の決断によって、その場で保険適応拡大の手続きがすぐに始まったという経緯があります。今では、「骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長」であれば、成長ホルモン分泌負荷試験なしで成長ホルモン治療を受けられるようになりました。多くの皆さんの協力のおかげで実現できたことだと思います。
<国際会議に参加して>
国際ターナーカンファレンスについて、2003年のシドニーで開催された会議に参加した時の様子を紹介します。
シドニーの国際会議では13カ国から240人の参加がありました。日本からは本人・家族12人、医師1人が参加しました。ワークショップ(勉強会)には、オーストラリアやアメリカからも医師が参加し、さまざまなレクチャーがありました。講演は全部英語だったのですが、私たちには同時通訳があったおかげで十分に理解することができました。
開催国のオーストラリアを中心に、ニュージーランド、シンガポール、南アフリカ、イギリス、フランス、ブラジルなど世界各国の本人や家族と交流ができました。日本の遊びとして、折り紙をいろんな国の子どもたちに教えてあげました。
各国のターナー本人と話していて思ったことは、欧米の本人たちはずいぶん大人びているように見えたということです。日本では先ず成長ホルモン治療で身長を伸ばすことが優先されますが、海外では女性らしくしてあげることが家庭でも医療でも重点がおかれているようです。海外のお母さんたちによると、ボーイフレンドが出来るかどうかが一番の心配ごとらしいです。日本なら、「そんな、おませな・・・」とか、「まだまだ子どもだから・・・」というのが普通かも知れませんね。
この国際ターナーカンファレンスですが、3年ごとに各国の持ち回りで開催されます。2009年には日本で開催できたらいいなと思います。
<先生方へのお願い>
小児科の先生方にお願いですが、ぜひ親御さんにターナーの会があることを教えてあげて下さい。現在、全国に20箇所の地域に会がありますが、「ひまわりの会」の会員さんの中にも会の存在をもっと早く知りたかった、教えて欲しかった、といって入会されている方が多いんです。入会するかしないかは、ご本人さんや親御さんの自由ですが、選択肢のひとつとしてぜひ紹介してあげてください。
先生方にもうひとつお願いがあります。ターナーの診断の説明については、親御さんや本人の心理面への配慮もお願いします。私は今までに全国から何百本も相談の電話相談を受けてきましたが、外来で聞かされた診断の説明で受けたショックを泣きながら話される方は少なくありません。「ターナー症候群には染色体の異常があり・・・」と医学書では説明されていることがありますが、私は異常とは考えていません。ターナー症候群は体質のひとつだと考えています。親の立場としては「ターナー症候群という体質で、染色体の一部に欠失があり・・・」と説明された方が判りやすいし、ショックは少ないように思います。会の存在は精神面で私たちにとって重要な働きがありますが、医療面では医師の協力無しではいられません。私たち親・本人と先生方は上下関係ではなく、対等のパートナーでありたいと思っています。
<親御さんへのお願い>
お母さんたちへのお願いもあります。お子さん本人を年齢にふさわしく育ててあげてください。小学校4年生なら4年生として、中学生なら中学生として接してあげてください。ターナーの子については、やや過保護になりがちなのですが、かわいい子には旅をさせてあげてください(笑)。特別なことをする必要はありません。ふつうに接してあげてください。もちろん得意不得意はあります。でも隣の子と較べるのではなく、昨日の我が子より今日の我が子が成長したこと誉めて上げてください。誉められて嬉しくない子はいません。本人にとって大きな自信になります。お母さん自身も嬉しくなれますよ。
お母さんたちの迷いや不安はよくわかります。でも逃げないでください。私もターナー症候群と診断を聞かされとき、ずいぶん不安になりました。しかし、同じ年齢の子どもをもつ親御さんや、先輩として成人本人の親御さんといっしょに「ひまわりの会」をやってきて、いろいろ励ましてもらったり教えてもらったりしてきました。お父さんにも大事な役割があります。お母さんをしっかり支えてあげてください。
私はいままで我が子からたくさんの大切なことを教えてもらったと思っています。娘が我が家の子として生まれてきてくれたことに感謝しています。彼女たちは私たちのかけがえのない大切な子どもなのです。
<生殖医療・不妊治療について>
「ひまわりの会」の会員さんにも海外で卵子提供を受けて出産していらっしゃる方もいますが、費用面などで多くの問題があります。国内に多くの希望者がいらっしゃることを考慮して、個人や夫婦の自由意志として卵子提供・卵子移植を日本国内でも受けられるという選択肢はあって欲しいと思います。私は2年間にわたり厚生労働省の委員として、不妊治療の法整備に関する討議をする会議に出席して審議・議論してきました。最終報告は出来たものの法制化にはまだ少し時間がかかるようです。
<さいごに>
「ひまわりの会」を運営してきて、ずっと感じてきたことは会活動の必要性です。私自身、同じ悩みをもつお母さんたちと話ができて本当に楽になれたんです。親御さんだけで一人で悩みを抱えていくのは重荷だと思います。身近にいつでも相談できる相手がいて、自分の子どもより年長のお子さんをもつお母さんから先輩としてのアドバイスがあったり、支え合って、励まし合っていくことが精神面ではとても重要なのです。